No.702 ヨーロッパ南天天文台(ESO)がチリに建設中の「欧州超大型望遠鏡(ELT)」の建設費、約14億5,000万ユーロ(約2,577億円)(2023年の経済条件・口径39m・2025年12月に完成までの費用を約9,000万ユーロ(約160億円)上乗せ)
ESOがチリのアルマソネス山に建設中の口径39mの望遠鏡ELTは、建設費が約14億5,000万ユーロ(約2,577億円)(2023年の経済条件)とされる。2025年12月には完成までの費用が約9,000万ユーロ(約160億円)増え、初めて光を入れるのは2029年3月の予定になった。
価格と出典
【価格】
・ELTの全体の基本計画の建設費は、2023年の経済条件で約14億5,000万ユーロ(約2,577億円)と見積もられている(ESOのELT公式サイト「FAQ」)。同じサイトの「Facts」のページも予算を14億5,000万ユーロ(約2,577億円)としている
・2025年12月の事務局長のメッセージは、望遠鏡本体と建設時の観測装置を合わせた「完成までの費用」を約9,000万ユーロ(約160億円)上げる必要があったと書いている(ESO・2025年12月17日)。上乗せ後の合計額は書かれていない
・額の移り変わり(ESOの発表)
| 時期 | 内容 | 額 |
| 2012年6月 | ESO理事会が計画を承認したときの望遠鏡の総費用 | 10億8,300万ユーロ(約1,925億円)(2012年の価格) |
| 2014年12月 | 第1段階の建設を承認、支出を認めた額 | 約10億ユーロ(約1,777億円) |
| 2020年12月 | 予算を10%増やすことを承認 | 総額13億ユーロ(約2,311億円) |
| 2023年の経済条件 | 全体の基本計画の建設費の見積もり | 約14億5,000万ユーロ(約2,577億円) |
・2012年の10億8,300万ユーロ(約1,925億円)から約14億5,000万ユーロ(約2,577億円)までは約34%の増加になる(このサイトでの計算)。ただし何年の価格で数えたかが違うので、そのまま比べられる数字ではない
・運用の費用は年5,000万ユーロ(約88.9億円)で、チリの観測所、ドイツ・ガルヒンクでの運用の支え、望遠鏡の改良や新しい観測装置への再投資を含む(ELT公式サイト「FAQ」)
【内訳・条件】
・場所はチリのアタカマ砂漠のアルマソネス山(標高3,046m)。超大型望遠鏡VLTのあるパラナル山から空の距離で23km(ELT公式サイト「Facts」)
・主鏡は口径39mで、798枚の六角形の鏡を並べる。光を集める面積は978㎡。鏡の材料のガラスセラミック「ゼロデュア」は140トン、うち132トンが主鏡(同)
・山頂を高さ約18m、合わせて約22万㎥削り、150m×300mの平らな土地を造った(同)
・建設の期間は約12年、使う期間は30年以上の見込み(同)
・2014年12月の理事会は、建設を2段階に分け、第1段階で観測装置を備えた望遠鏡を造ることを認めた。ポーランドの加盟で、資金の約束が第1段階の費用の90%を超えた(ESOの発表・2014年12月4日)
・2020年12月の10%の上乗せで、第2段階に回していた部品(2つ目の焦点前の装置、レーザーで人工の星を作る仕組み2組)、大気を見張る装置、アルマソネスの小さな技術棟、分かっている技術の危うさへの備え、パラナル観測所の一部として運用を始める費用を予算に入れた(ESOの発表・2020年12月4日)
・予算のおよそ80%は、ESOの加盟国とチリの企業との契約に使われる(同)。ELT公式サイトは、建設は資金が全部そろっているとしている
・2025年12月のメッセージでは、ドームと架台の骨組みが完成に近づき、ドームの外装もほぼ張り終えた。200枚を超える主鏡の鏡が仕上がって箱に入り、運び込みを待っている(ESO・2025年12月17日)
【注意】
・約14億5,000万ユーロ(約2,577億円)を載せたELT公式サイトのページには、日付が書かれていない。2025年12月の約9,000万ユーロ(約160億円)の上乗せがこの額に足されたのかどうかも、確かめた資料には書かれていない
・ESOの額はユーロのまま書いた。円に直した額は、何年の経済条件の額かがはっきりしないので書かない
・ELT公式サイトは、目に見える光と近赤外線で観測する望遠鏡としては「群を抜いて世界最大」と書く(もっと大きい電波望遠鏡はあるとしている)。まだ建設中で、初めて光を入れるのは2029年3月、最初の科学観測は2030年12月の予定(ESO・2025年12月17日)。危険の分析で日程が遅れたとしている
・比べる材料:米国が関わる30メートル望遠鏡(TMT、ハワイ・マウナケアの計画)と巨大マゼラン望遠鏡(GMT、チリ)は、それぞれ約25億〜30億ドル(約3,943億〜4,732億円)と見積もられている(ハワイ公共ラジオ・2025年6月2日)。Civil Beat(2025年5月30日)は、GMTは25億ドル(約3,943億円)を超える見込み、TMTは非公式の見積もりで30億ドル(約4,732億円)以上と伝えた。どちらも計画の公式の発表の額は確かめきれていない
・米国立科学財団(NSF)は2026会計年度の予算要求で、数十億ドルの望遠鏡を2つ支え続けることはできないとして、TMTにはこれ以上の資金を出さず、GMTを最終設計の段階に進めるとした(ハワイ公共ラジオ・2025年6月2日)。最終設計に進んでも、建設が認められるとは限らない(同)
・国立天文台のすばる望遠鏡(口径8.2m)の建設費はこのサイトに別の記事がある
【なぜこの価格なのか(考察)】
出典の事実:39mの主鏡を798枚の鏡で作り、鏡のガラスセラミックだけで140トンを使う。標高3,000mを超える砂漠の山頂を削って土台を造り、建設に約12年をかける(ELT公式サイト「Facts」)。2020年の上乗せは、後回しにしていた部品や技術の危うさへの備えを予算に戻したためで(ESOの発表)、2025年の上乗せは観測装置の費用が増えたことなどによる(ESO・2025年12月17日)。
推測:1台かぎりの装置を、何百枚もの鏡をナノメートルの精度でそろえる技術で造るため、作ってみて分かる課題が多く、進むにつれて費用が膨らんできたと考えられる。それでも各国が出し続けるのは、目に見える光で観測する望遠鏡として他に例のない大きさで、30年以上使えることに価値を認めているためと考えられる。
【どんな人が利用しているか(考察)】
出典の事実:建設と運用はESOが行い、加盟国が資金を出す。予算の約80%は加盟国とチリの企業との契約に使われる(ESOの発表・2020年12月4日)。推測:完成後は、加盟国を中心とする天文学者が観測の時間を申し込んで使うと考えられる。
【提供元】
・ESO(ヨーロッパ南天天文台) — ELTを建設し運用する政府間の天文学の組織。本部はドイツ・ガルヒンク — https://www.eso.org/
【原文】
・FAQ(ESO ELT公式サイト・日付の記載なし)https://elt.eso.org/about/faq/
・Message from the Director General(ESO・2025年12月17日)https://eso.org/sci/publications/announcements/sciann17750.html
・Funding boost for ESO's Extremely Large Telescope(ESO・2020年12月4日)https://www.eso.org/public/announcements/ann20034/
・Green Light for E-ELT Construction(ESO・2014年12月4日)https://www.eso.org/public/news/eso1440/
【出典】
・FAQ(ESO ELT公式サイト・日付の記載なし・2026年10月24日に確認)https://elt.eso.org/about/faq/
・Facts about the ELT(ESO ELT公式サイト・日付の記載なし・2026年10月24日に確認)https://elt.eso.org/about/facts/
・Message from the Director General(ESO・2025年12月17日)https://eso.org/sci/publications/announcements/sciann17750.html
・Funding boost for ESO's Extremely Large Telescope(ESO・2020年12月4日)https://www.eso.org/public/announcements/ann20034/
・Green Light for E-ELT Construction(ESO・2014年12月4日)https://www.eso.org/public/news/eso1440/
・National Science Foundation budget plan drops support for Thirty Meter Telescope(Hawaiʻi Public Radio・2025年6月2日)https://www.hawaiipublicradio.org/local-news/2025-06-02/national-science-foundation-budget-plan-drops-support-for-thirty-meter-telescope
・Funding Cuts May Doom The Long-Stalled Thirty Meter Telescope(Civil Beat・Kevin Dayton・2025年5月30日)https://www.civilbeat.org/2025/05/funding-cuts-may-doom-the-long-stalled-thirty-meter-telescope
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