世界の富は誰が持っているのか
調べた日:2026年10月5日。数字はすべて下の「出典」の資料で確かめたものです。予測や意見は、誰の見方かを書いています。
世界の富は、どれくらい一部の人に集まっているのでしょうか。 何%の人が世界の富の半分を持ち、その偏りはこれからどうなるのか。 そして、いま急速に広がる AI は、富の偏りを広げるのか、縮めるのか。 国際機関、銀行、研究者の資料で調べました。
世界の富のピラミッド
スイスの銀行 UBS は、世界の成人を持っている財産の額で4つの層に分けています。 財産は、預金や株などの金融資産に、家や土地を足し、借金を引いた純資産で数えます。
| 1人あたりの純資産 | 成人に占める割合 | 富全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 100万ドル超 | 1.5%(約5,800万人) | 48.4% |
| 10万〜100万ドル | 15.3% | 38.8% |
| 1万〜10万ドル | 約41〜42% | 12.2% |
| 1万ドル未満 | 約41〜42% | 0.6% |
2025年末(UBS Global Wealth Report 2026)。下の2層の割合は報告書の中で書き方が揃っていないため「約41〜42%」としました。
成人の1.5%にあたる百万長者が、世界の富のほぼ半分を持っています。 純資産10万ドルを超える人まで広げると、成人の約17%で富の約87%になります(このサイトでの計算)。 反対に、純資産1万ドル未満の約4割の成人は、全部合わせても世界の富の0.6%しか持っていません。
世界の富の半分以上を持つのは何%の人か
別の物差しでも、偏りの大きさは変わりません。 経済学者のチームがまとめる World Inequality Report 2026 は、2025年の世界の富の分かれ方をこう推計しています。
| 層 | 世界の富に占める割合 |
|---|---|
| 上位10% | 75% |
| 上位1% | 37% |
| 上位0.001%(約5万6,000人) | 6% |
| 下位50% | 2% |
World Inequality Report 2026。報告書の本体は開けなかったため、執筆陣が書いた LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)のブログ記事で数字を確かめました。
この推計では、上位1%だけでは富の半分に届かず、上位10%で4分の3になります。 いちばん上の約5万6,000人は、人類の下半分を合わせた額の3倍を持っています。 UBS の推計では成人の1.5%で富のほぼ半分でした。 2つの推計は数え方が違うので数字はずれますが、世界の富の半分前後を、成人の数%以下の人が持っている点は同じです。
富を「管理」している会社
会社が世界の富を握っている、という話もよく聞きます。 ここで区別しておきたいのは、会社が富を「持っている」のか、お客さんから「運用を任されている」のかです。
世界最大の資産運用会社 BlackRock の運用資産は、2026年6月末で15.3兆ドルです。 2位の Vanguard は、2025年末で12兆ドルでした。 どちらも、年金や保険会社、個人から預かったお金で、値上がりや値下がりはお客さんのものになります。 ただし運用会社は、預かったお金で買った株の議決権を使うので、企業への影響力を持ちます。
この規模を世界の金融資産と比べると、それぞれ数%にあたります。 金融安定理事会(FSB)の数字から計算すると、世界の金融資産は2024年末で約500兆ドルです(このサイトでの計算。時点がずれているので目安です)。
株の世界では、少数の巨大企業への集中が目立ちます。 世界の主な株式をまとめた指数 MSCI ACWI では、2026年9月末の時価総額の25.4%を上位10社が占めています。 1位はエヌビディアで5.11%、続いてアップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベットと続きます。 国別では米国の企業が64.2%で、日本は5.2%です。
これまでの変化
富の偏りは、ここ30年で強まってきました。 World Inequality Report 2022 によると、1995年から2021年までに増えた世界の富のうち、38%を上位1%が手にしました。 下位50%が手にしたのは2%です。 上位0.001%が持つ割合も、1995年の約4%から2025年の約6%に上がりました。
国の中でも同じ傾向が見られます。 米国の連邦準備制度理事会(FRB)の統計では、米国の上位1%の世帯が持つ純資産の割合は、1989年の22.8%から2026年4〜6月の32.5%に上がり、統計を取り始めてから最も高くなりました。
ただし、貧しい人が増えたわけではありません。 UBS によると、純資産1万ドル未満の成人の割合は、2000年のほぼ75%から2025年には41%強まで下がりました。 世界全体が豊かになりながら、増えた分の多くが上の層に集まった、というのがこの30年の姿です。
これからの変化
予測では、いちばん上の層がさらに増えます。 英国の不動産会社 Knight Frank は、純資産3,000万ドル以上の超富裕層が、2026年の約71万人から2031年には約95万人に増えると予測しています。 増え方は北米が53%と大きく、超富裕層に占める北米の割合は2031年に42.6%になる見込みです。 ビリオネアも3,110人から3,915人に増えると見ています。
もう一つの大きな変化が、相続による富の移動です。 UBS は、今後20〜25年で世界で83兆ドルが受け渡されると見積もり、そのうち74兆ドルが親から子へ渡るとしています。 米国だけを見た調査会社 Cerulli は、2048年までに約124兆ドルが受け渡されると推計しています。 これは財産が新しく生まれるのではなく持ち主が替わる動きなので、受け継ぐ人の顔ぶれによって、偏りの形も変わりえます。
AI は富の偏りを変えるのか
AI が富の偏りにどう効くかは、まだ答えが出ていません。 ここでは、測った事実と、予測や意見を分けて紹介します。
偏りを広げるという見方
国際通貨基金(IMF)は、2024年1月の分析で、世界の雇用の約40%が AI の影響を受けると推計しました。 先進国では約60%に上ります。 そのうえで、AI が人の仕事を置き換え、AI のための設備への需要が増えると、資本を持つ人の収益が増えて富の格差は広がる、という試算を示しました。 IMF のゲオルギエバ専務理事は、ほとんどのシナリオで AI は全体の格差を悪化させるだろう、と書いています。
この見方の裏付けになるのが、株の持ち方の偏りです。 FRB の統計では、2026年4〜6月に米国の株式と投資信託の約88%を上位10%の世帯が持っていました。 AI 企業の株が値上がりすると、その利益の大半はこの持ち方どおりに上の層に入ります。 実際、UBS は、テック分野のビリオネアの資産が1年で約4分の1増えて3.0兆ドルになり、AI に関わる会社の株価上昇が押し上げたと説明しています。
国と国の差も広がるおそれがあります。 世界銀行によると、2024年の世界の安全なネットサーバーの半分は米国にあり、データセンターの容量の77%は高所得国にあります。 低所得国は0.1%未満です。 AI を動かす基盤が豊かな国に集まっているので、恩恵も豊かな国に集まりやすいという見方です。
偏りを縮めるかもしれないという見方
反対の方向を示す実験の結果もあります。 スタンフォード大学のブリニョルフソン教授らが、顧客サポートの担当者5,179人を調べたところ、生成 AI の手助けで1時間あたりの解決件数が平均14%増えました。 経験の浅い人は34%増えた一方、熟練者はほとんど変わりませんでした。 コンサルティング会社 BCG の758人の実験でも、AI を使ったときの伸びは、成績が平均より下の人で43%、上の人で17%でした。
経済協力開発機構(OECD)も、2014〜18年の19か国のデータで、AI にさらされた職業ほど同じ職業の中の賃金の差が縮んでいたと報告しています。 ただしこれは生成 AI が広まる前のデータです。
まだ決まっていない、という見方
経験の浅い人の仕事がはかどることと、富の偏りが縮むことは別の話です。 2024年にノーベル経済学賞を受けた MIT のアセモグル教授は、低技能の人の生産性が上がっても格差が縮むとは限らず、AI は資本の収入と働く人の収入の差を広げると見ています。 また、AI による生産性の伸びそのものが、今後10年で小さめ(全要素生産性で0.66%以下)だと予測しています。
若い働き手には、すでに逆向きの兆しも出ています。 ブリニョルフソン教授らが米国の給与データを調べた2026年8月の報告では、AI にさらされる職業で働く22〜25歳の雇用が、そうでない職業と比べて19%少なくなっていました。 主な理由は解雇ではなく、若い人の採用が減ったことです。 著者自身は、因果を確かめたものではなく早い時期の兆しだとしています。
IMF の試算は、税や社会保障の変更を入れていません。 IMF は別の分析で、資本の所得への課税を強めること、失業保険や職業訓練を広げることを勧めています。 AI だけにかける特別な税は勧めていません。 AI が富の偏りを広げるか縮めるかは、技術そのものより、税や教育、競争のルールをどう作るかで変わる、というのが国際機関に共通する見方です。
出典
- UBS「Global Wealth Report 2026」(2026年6月30日) https://www.ubs.com/global/en/media/display-page-ndp/en-20260630-gwr-2026.html
- UBS「Global Wealth Report 2025」報道発表(2025年6月18日) https://www.ubs.com/global/en/media/display-page-ndp/en-20250618-gwr-2025.html
- UBS「Billionaire Ambitions Report 2025」報道発表(2025年12月4日) https://www.ubs.com/global/en/media/display-page-ndp/en-20251204-billionaire-ambitions-report-2025.html
- LSE Inequalities ブログ「56,000 people own three times more wealth than half of humanity」(World Inequality Report 2026 の紹介・2026年5月12日) https://blogs.lse.ac.uk/inequalities/2026/05/12/56000-people-own-three-times-more-wealth-than-half-of-humanity/
- Lucas Chancel「World Inequality Report 2022」解説資料(世界銀行サイト) https://thedocs.worldbank.org/en/doc/206293abe6ad06f4dc8c2fb541a3b93b-0330272022/original/Chancel2022WB.pdf
- BlackRock 2026年第2四半期 決算資料(2026年7月15日) https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0002012383/000119312526304013/blk-ex99_2.htm
- Vanguard「Vanguard in a nutshell 2026」 https://www.ch.vanguard/content/dam/intl/europe/documents/en/vanguard-in-a-nutshell-eu-en.pdf
- 金融安定理事会(FSB)ノンバンク金融の報告(2025年12月16日) https://www.fsb.org/2025/12/fsb-reports-continued-growth-in-nonbank-financial-intermediation-in-2024-to-256-8-trillion/
- MSCI「MSCI ACWI Index Factsheet」(2026年9月30日時点) https://www.msci.com/documents/10199/a71b65b5-d0ea-4b5c-a709-24b1213bc3c5
- 米連邦準備制度理事会「Distributional Financial Accounts」(FRED) https://fred.stlouisfed.org/series/WFRBST01134 / https://fred.stlouisfed.org/series/WFRBST01122
- Knight Frank「The Wealth Report 2026」(2026年4月) https://www.knightfrank.co.uk/research/article/2026/4/twenty-years-of-the-wealth-report--lessons-from-two-decades-of-change
- Cerulli Associates「Unpacking the Great Wealth Transfer」(2025年10月) https://s3.us-east-1.amazonaws.com/cerulli-website-assets/documents/White-Papers/2025/Cerulli-White-Paper_Unpacking-the-Great-Wealth-Transfer.pdf
- IMF「Gen-AI: Artificial Intelligence and the Future of Work」SDN/2024/001(2024年1月) https://www.elibrary.imf.org/view/journals/006/2024/001/article-A001-en.xml
- IMF ブログ Kristalina Georgieva「AI Will Transform the Global Economy. Let's Make Sure It Benefits Humanity.」(2024年1月14日) https://www.imf.org/en/Blogs/Articles/2024/01/14/ai-will-transform-the-global-economy-lets-make-sure-it-benefits-humanity
- IMF「Broadening the Gains from Generative AI: The Role of Fiscal Policies」SDN/2024/002(2024年6月) https://ideas.repec.org/p/imf/imfsdn/2024-002.html
- OECD「What impact has AI had on wage inequality?」(2024年11月29日) https://www.oecd.org/en/publications/what-impact-has-ai-had-on-wage-inequality_7fb21f59-en.html
- 世界銀行「Digital Progress and Trends Report 2025」 https://openknowledge.worldbank.org/server/api/core/bitstreams/f2509a0f-7153-4f32-b180-bc11e90c4940/content
- Daron Acemoglu「The Simple Macroeconomics of AI」NBER Working Paper 32487(2024年5月) https://www.nber.org/papers/w32487
- Erik Brynjolfsson ほか「Generative AI at Work」NBER Working Paper 31161(2023年) https://www.nber.org/papers/w31161
- Erik Brynjolfsson ほか「Canaries in the Coal Mine?」(2026年8月版) https://digitaleconomy.stanford.edu/app/uploads/2026/08/Canaries_August2026.pdf
- Fabrizio Dell'Acqua ほか「Navigating the Jagged Technological Frontier」HBS Working Paper 24-013(2023年) https://mitsloan.mit.edu/sites/default/files/2023-10/SSRN-id4573321.pdf